このほか、印象に残った舞台作品は、ニース国立劇場で見たランペドゥーザ島を目指す難民たちの芝居『 Esperanza 』、パリで見た独創的なメタ演劇ナンセンス喜劇26000 couverts の『À bien y réféchir, et puisque vous soulevez... 』、 全員が「ボトム」を演じるカクシンハン『夏の夜の夢』、非舞台的なテクストを斬新なアイディアで舞踊化したサファリ・P『悪童日記 』、特異な身体性でことばをねじまげ、空間をデフォルメさせる地点の舞台(松原俊太郎作、三浦基演出の『忘れる日本人 』、チェーホフ『かもめ』)、シンプルで緊張感に満ちた力強い舞踊歌唱劇、アヴィニョンで見たLemi Ponifasioの『Standing in Time 』、原作にまつわる複数のテクストを再構成し、狂気に満ちた強力な前衛的時空を作り出したカストルフ『偽善者たちのカバラ』、モリエールの伝記を二人の役者の見事な技巧で劇的な語りとして再構成した Ronan Rivière『Le Roman de Monsieur Molière』、音羽屋と宮城聰のコラボによる歌舞伎の新作『マハーバーラタ戦記 』、学生たちの若々しいエネルギーが圧巻だったミュージカル Seiren Musical Project 『Bring it on!』。 2017年のベスト・アクトはアヴィニョンのオフで見たLe Roman de Monsieur MolièreのRonan Rivière ロナン・リヴィエールだ。たとえフランス語がわからなくてもこの俳優のすばらしさは見れば誰でもわかるだろう。しなやかで美しい動き、そして流麗な語りがもたらす快感。自主公演であるオフのプログラムでこんな芝居、こんな俳優に出会えると感動が大きい。
客席は空いていた。この七人のキャストでも集客が厳しいのか。興行は難しい。招待客がたくさん混じっているような感じがした。「この熱き私の激情」という日本語タイトルのセンスもなんかなあという感じがする。原題はLa fureur de ce que je penseなので、やりすぎの意訳というわけではないのだけれど。