閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

永遠と一日

■監督・脚本:
テオ・アンゲロプロス
■美術:
ヨルゴス・パッツァス
■音楽:
エレニ・カラインドルー
■出演:
ブルーノ・ガンツ
イザベル・ルノー
@有楽町国際フォーラムD1
テオ・アンゲロプロス映画祭
評価:☆☆☆☆

                                                                                        • -

アンゲロプロスの作品をはじめてみたのは,大学院に入ったころだっただろうか.あるいは博士課程浪人中だったかもしれない.予備知識をほとんどもたずになんとなく,飯田橋のギンレイホールで,『霧の中の風景』と『こうのとり,たちずさんで』の二本立てを観た.
最初が『霧の中で』だった.たるい編集で睡魔に襲われそうになりながらも,次第に静謐で美しいイメージにぼおっとなった.一本目を見た段階でかなり疲労を感じていたが,そのまま二本目に突入.やはり展開がたるくてやたらと眠くて長い映画だった.しかし時折はっとするような美しいイメージが挿入される.無言の結婚式,そして最後の電柱工事人のイメージの美しさにしびれるような感動を覚えた.

今回のアンゲロプロス映画祭りでは一週間の間に,日本未公開作を含め全作品を公開するというもの.初期の『旅芸人の記録』『アレクサンダー大王』等の大長編も関心はあったものの,見に行く体力,気力に欠けていて,『こうのとり』と未見の近作『永遠と一日』の二本をみにいくつもりが,『こうのとり』は前売りで完売.結局本作のみの鑑賞となった.

あいかわらずの長まわし,たるくて焦点のはっきしない展開,寡黙さに,睡魔に断続的に襲われる.こうしたたるい映画をどうどうと撮ってしまうのはすごいもんだ.
アンゲロプロスはたるいだけではない.きわめて美しいタブロー,叙情的で人工的なタブローが間に挟まる.長い退屈の間に挟まれるタブローの息を呑むようなすばらしさ,これに惹かれるのである.今回も夜のバスの中の映像ほか,美しいシーンがいくつか.
鑑賞後にしみじみと感慨を味わうことのできる,そういう映画である.