-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
昭和30年代初期の鹿児島南部の離島を舞台に,当時の日本における都市と田舎の対立を描く.離島の自然の厳しさ,貧しさ,民度の低さのリアリティ.有吉佐和子の島への視点は,厳しく,皮肉もありながら,慈愛に満ちていて,かつきわめて現実主義的,功利主義的である.当時はまさに田舎の貧しさは未開を意味していたに違いない.
未開の島をふらりとたずねる主人公万里子が魅力的である.この当時にはこんなに洗練されていてかつ健気な精神の女性がリアリティを持ちえたのである.理知的で人間通でもあり美しいけれど,いまだ処女でやさしい女たち.昭和30年代の風俗小説を読む楽しみはこうした女性に出会えることだ.
時代の世相を描く風俗小説でもありながら,古びたところを感じさせない佳作.