斎藤美奈子(文春文庫,2001年)
評価:☆☆
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斎藤が「まえがき」で提示しているチェックリストをうめるまでもなく,僕は典型的な「躍らされる読者」であり,時代・環境の流れの中で濫読を続けている.ものを観る上でぶれない軸みたいなものがあればいいなぁと思うこともあるけれど,諸行無常,過去の己の愚かな誤謬も認めて恥をかき続けるのが人生である,と思うこともある.
単行本の刊行は1998年で今から6年前.この書評本ではかなり広範な内容の本を俎上に乗せているが,著者の得手不得手がはっきり露呈している感じである.この本が出た当時は歴史教科書が話題になった時代だが,人権平和思想がからむ戦争ものについてのコメントは左翼的立場からのありふれたものが多い.人権平和関連の言説で気の利いたことを言うのはなかなか難しい.この他の書評に対しても,昨日読んだ『趣味が読書.』に比べると切れ味が鈍い感じ.斎藤は表現そのものよりも,表現の向こう側に在る作家としてのあり方を問題にするのが持ち味.