閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

精神科はいらない

下田治美(角川書店,2001年)
精神科医はいらない (文芸シリーズ)
評価:☆☆

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精神科医療への疑問をぶちまけた書.ただし体系的に取材されたものではないので,作者の主張が独善的に感じられる部分も在る.人間の心の病を治療することの本来的「不可能性」を感じると同時に,医療への不信感,不安感があおられる感じ.精神疾患の非日常性への感覚の根本についての追及がなされていないのが不満.幸いにして今まで僕が精神疾患とは無縁であるからかもしれぬが,やはり内蔵疾患などの「病気」とは一線を画す何かが精神疾患にはあるように思う.たとえそれが錯覚や偏見に基づくものであるにせよ,統計的な数字を並べることで精神疾患を「日常化」することは難しい.