篠田節子(文春文庫,2002年)
評価:☆☆★
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圧倒的筆力で一気に読ませるけれども,得体がしれずつかみどころのない奇妙な味わいの作品.篠田節子らしい小説.山本周五郎賞受賞のこの長編作品も,リアリズムと幻想とが反発し合いながら混交する作品であった.短編のほうがこの作家の筆力と発想を生かしやすい気もするが.長編だと構成のアンバランスさが気になり,読後感が弱くなる.神がかったネパール人の妻によって,主人公の旧家がすさまじい勢いで没落していく様の描写は息苦しくなるほど.ただ宗教的コミューンを形成したネパール人妻がその後失踪して故国に戻るという展開はとってつけたような感じがある.