青年団第34回公演(1998年)
先日観た『S高原より』が気に入り、その余波で図書館でビデオを借りる。作品初演は1994年。『東京ノート』の翻案である『ソウルノート』が今月末に駒場アゴラ劇場で上演される。韓国語バージョンでどう変換されているか気になるところではあるが、青年団の芝居は観に行くとそれなりに楽しめるのだけど、そのあまりに日常的な装いとすかした知的な雰囲気からか反発も感じる。それで何となく足が遠のく。観ると楽しめるものの、悪い後味だけをひきずってしまうことが多いように思う。
青年団・平田オリザの代表作である『東京ノート』はこれまで未見。近未来の東京、戦乱の欧州から大量の名画が東京に避難されている。私立の小さな美術館のロビーが舞台。いく組かの互いにまるで関わりのない人たちのロビーでの日常的な会話。会話の表現はたわいなく、いかにも美術館ロビーで行われそうな空虚なやりとりであるが、その空回りするような日常会話の向こう側に各人がかかえる現実が透けて見える。ディアローグの技巧(作り方および演出の両方)の職人芸には天才を感じる。
ラストシーンの仕掛けはあざといが美しい。青年団の女優たちはやはりいびつなぎごちなさを持った人が多いように思う。平田オリザの「趣味」が反映されているのだろうが、男優たちにくらべると、女優陣の顔ぶれはかなりユニークであるように思う。そしてオリザの脚本も、女性像の提示において男性の登場人物より辛辣、加虐的に意地悪であるように感じる。