閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ヴェニスの商人

http://www.venice-shonin.net/index.html

のど風邪を引きずる。授業があるので6時起床。着替るつもりだった服がまだ乾いていなかったというくだらないことで妻と大げんか。いらいらした気分で家を出る。へろへろになりながら授業。寝不足。午後の「フランス語綴り方実習」は休み、夜のラテン語授業まで体力を温存させることにする。
新宿のマンガ喫茶で二時間仮眠。四時から高島屋にあるテアトルタイムズスクエアに前売り券を買っていた『ヴェニスの商人』を見にいく。映画鑑賞後、へろへろの状態でラテン語授業。予習が今回は不十分で申し訳ないことをした。

ヴェニスの商人』はシェイクスピア作品の中でのメジャーな作品だが、これまで未読。舞台も見たことがなかった。あらすじ程度は知っていたが、ほぼ真っ白な状態で映画を見る。
原作にある明らかなユダヤ人蔑視の描写ゆえに、映画化が難しかった作品だとのこと。
古楽古楽風アレンジのオリジナル曲、現代風アレンジの古楽の組み合わせで、ほぼなりっぱなしの音楽が映像美をもりたてる。ヴェネチアを舞台とした映像は叙情的かつ幻想的な雰囲気を持つ美しさに満ちている。
最後に己が大切にしていたあらゆるものを一気にはぎ取られてしまうユダヤ人シャイロックの「悲劇」は、シェイクスピアの時代には悪に向けられた当然の報いとして勧善懲悪の快感を観客にもたらしたに違いない。この映画の視点はシャイロックに同情的だ。シャイロックとキリスト教徒の対立は、現代的な価値観に基づき相対化されている。「世俗化」ともいえるようなこうしたテクストの意味の大転換にもかかわらず、作品はむしろ古典としてその厚みを増したように思える。ポーシャとバッサーニオの恋愛も、おそらく原作では幸せな大円団なのだが、映画ではバッサーニオの「裏切り」に対するポーシャの幻滅が強調され、ハッピーエンドではあるものの、その色調は一色ではない。若干苦い後味の残る結末となっている。