閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

砂と兵隊

青年団第49回公演
http://www.seinendan.org/jpn/info/info050918.html

  • 作・演出:平田オリザ
  • 美術:杉山至×突貫屋
  • 照明:岩城保
  • 衣裳:有賀千鶴
  • 出演:山内健司、ひらたよーこ、小林聡、志賀広太郎、根本彩、堀夏子、古屋隆太
  • 劇場:駒場 アゴラ劇場
  • 評価:☆☆☆★
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舞台一面は細かい白砂の砂漠。左手が高くなっていて、右手に下っている。
舞台左手には上から砂袋がつり下げられていて、意図的に開けられた小さな口から細い砂の意図がちょろちょろと流れる。この「砂時計」は上演前および上演後に流れ続けるが、劇の進行中では、思い出したように断続的に短い時間流れ落ちる。もちろんこの「砂時計」は劇中の世界で経過する単調な時間を暗示している。
この砂漠の戦場を4組の人間が往来する。派遣された自衛隊の隊員、新婚の夫婦、「夫」を探しにやってきた妻、母親を捜しにやってきた家族。真っ白い砂の舞台の上をこの4組は、左手から登場しては右手に退場していくという運動を繰り返し行う。終わりのない反復される彼らの円環運動(というのも観客にとっては彼らが右手の舞台そでから出て行ったあと、いったん下に降りてから、左手に移動し、そこから左手舞台に昇るという動きが、容易に思い浮かべることができるのである)、舞台上の永続する非日常的日常の暗喩となっている。
砂漠の戦場という特異な状況の中で、日常性を生きる登場人物の姿は、現代の戦争と我々の日常の状況の戯画となっている。
不条理な味わいの濃厚ないかにも面白そうな設定の芝居ではあるが、僕はその仕掛けの面白さほどは楽しむことはできず。間延びしたディアローグのリズムに若干の退屈を覚える。「戦争」はやはり僕にとっては遠い物語だからだろうか。
120名ほどの客席は満員。通路にもびっしり椅子を並べるので、アゴラ劇場での公演の際は体調を整えておかなければ怖い。ちょっと前まで胃腸の調子の悪さに悩まされていたので、とりわけアゴラ劇場の状況には恐怖感を覚える。万一公演の最中にお腹の具合が悪くなったときは、舞台上を横切って、客席をおしのけるような形でないと出口に到達することは不可能なのだから。これまでせっぱ詰まった客によるこうした事態はおそらく何回かあったはず。他人事なら、いったい客がいきなり立ち上がって役者が演技している舞台上を横切って駆け抜けていく様を観てみたい気もする。