閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

グロテスクな教養

高田理恵子(ちくま新書、2005年)
グロテスクな教養 (ちくま新書(539))
評価:☆☆☆☆

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近現代日本社会における「教養」および「教養主義」の功利性について、シニカルな視点で分析する。あとがきに著者自身が書くように確かに読んだ後「いやーな気分」になる。
「教養主義」の周縁にしがみつくようにして、自分の社会の中の居場所をかろうじて確保している僕のような立場の人間とっては苦い指摘ばかり続く。
「教養」「教養主義」の実態の暴露は、著者自身にとっても自虐的な検証作業であったはずだ。
きわめて興味深いテーマであるが、結局教養主義なき現代の日本の中で、残存する教養主義者たちはどういう立ち位置をとりうるのだろうか。
東大文学部という教養主義の牙城から出て、今は教養主義の無効性・虚しさを生身で感じざるをえないような場で教鞭をとる筆者は、どのような気持ちでどのような講義を行っているのだろうか。

教養主義の風土が日本と欧州では決定的に違う。フランスの大学環境がやけに快適に感じられ、かの地での日本人学生とのつきあいが(少なくとも僕にとっては)時折やけにそらぞらしく感じられる理由がよくわかった気がした。