閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

贋作・罪と罰

http://www.nodamap.com/02tsumitobatsu/gaiyou.htm
野田地図第十一回公演

対角線側を正面に比較的こぶりの正方形の舞台が劇場中央に据えられている。客席は舞台を挟む形で配置される。三階席からの鑑賞だったが、最前列で舞台が劇空間の真ん中にあったため、距離も近く、よく見える席位置だった。
装飾のないシンプルな灰色の舞台。セリがいくつかあるものの、基本的には複数の椅子の組み合わせ、長い四本の蛍光灯の柱、そして照明の変化で、様々な場が表現される。
いろいろな演劇的創意、特にシンプルな舞台をちょっとした工夫で変化させる仕掛けの饒舌さに感心する。舞台空間の提示の仕方には野田の才気を感じ、二時間の上演時間退屈することはなかった。しかし劇の内容は子供向きにリライトされた『罪と罰』のように僕には感じられ不満が残る。わかりやすい芝居ではあったけれど、そこで提示される世界観や倫理観は単純でありふれたものであり、幼稚ささえ感じてしまった。
松たか子古田新太野田秀樹以外の役者の存在感が乏しい。また松、古田という個性的な俳優もその魅力・実力が十全に引き出されているともいいがたい。芝居クライマックスで発覚するこの両者の恋愛関係は僕には唐突に思え説得力に乏しい展開に感じられた。
一年前に見た野田地図公演『走れメルス』も僕にはピンとこなかった。野田歌舞伎『鼠小僧』にはしびれるような演劇的感興を感じたのだけど、野田地図公演とは相性があまりよくないのかもしれない。