閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ダークマスター Darkmaster_2006

庭劇団ペニノ
http://www.niwagekidan.org/next/index.html

fringeブログでのタダゴトではない激賞ぶりを読んで思わず予約する。
アゴラ劇場は座布団桟敷も出る超満員。観客二人に一つの割りでFMラジオが配布される。このFMラジオは実に効果的に舞台世界と観客を結びつける小道具として機能する。
カウンター席だけの古びてさえない定食屋の美術のハイパーリアリズムの見事さに圧倒される。登場人物の演技の演出も徹底した写実主義なのであるが、登場人物はどこか奇矯でいびつさを感じる要素を抱えていて、背景となる舞台の日常性と親和しない。人物と背景のずれがもたらすユーモアは、黒くてグロテスクな、観客の心をざわざと波立たせるような粗い肌触りがある。
写実主義的な再現美術の中で、超写実的なスタイルで演じられる不条理な恐怖もの。目の前で再現されているのは理解可能なものであるのに、展開は説明不足のまま唐突にこちらの「期待の地平」を裏切り続ける。わかりきったもののが不可解なものに変質したまま置き去りにされるような不安感が次第に増大していく。
こびと俳優のマメ山田の起用という発想は「悪魔的」なすばらしさ。彼が最初に登場したシーンで居心地の悪さを伴う心のゆらぎを感じない観客は少ないはずだ。
選曲の趣味もよし。