扇田昭彦(朝日新聞社、2005年)
評価:☆☆☆★
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演出家を中心に24人の演劇人の仕事と人物像を紹介したエッセイ集。もともと朝日新聞演劇担当記者だった著者の演劇交友録みたいな感じである。離婚騒動について触れていた井上ひさしについての記述とシェイクスピア・シアター主宰の出口典雄の軌跡の章が個人的には興味深い内容を含んでいたが、全般に薄味でつっこみにとぼしい。「悪い評を書いて一時対立していた」等の記述がしばしば出てくるが、取り上げた人物が筆者の知人でしかも存命中だったりすると、やはり筆に遠慮が出てしまうようだ。演劇ジャーナリズムは、演劇実作よりはるかに小さな世界だろうし、演劇人と記者の間の個人的なつきあいの中で形成された持ちつ持たれつの関係の中でなんとかやっていける面も多いだろうから、仕方ない感じもするけれど。プロのジャーナリズムの立場から演劇と関わりを持つ場合の宿命のようなものかもしれない。
扇田氏のこの著作の中の記述に限らず、演劇人が悪評に対して不寛容な人が多いのは、正直釈然としないところもある。興行への影響という理由もあるのだろうけど、劇評の類は所詮「好き・嫌い」の世界である。演劇という「娯楽」について観客がどのような感想を持とうとそれは自由ではないかと思うのは、僕がもっぱら観客の立場しか知らないからだろうけど。