閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

図書館とオペラ座

午前8時に起床.朝食をとり,シャワーを浴びる.とりあえず国立図書館に行くことにする.入館カードを更新し,滞在中の日中の居場所を確保したい.午前10時過ぎに図書館に到着.更新はすんなり完了.面接にあたった館員が非常に感じのよい人でほっとする.パリでは日本では考えられないくらい意地悪な人,不愉快な対応をする人間も多いが,その反面,親切な人は本当に親切で融通も利く.研究者フロアに降りて座席を予約しようとすると満席.11時をすぎた頃にようやく席を確保できる.
午後5時過ぎまで図書館で『アラスのクルトワ』を読む.眠気も感じることなくよくはかどる.図書館を出ていったんホテルに戻る.ホテルの近くのケバブ屋でケバブを購入し,部屋で食べる.食べ終わると午後6時半.食事後,メトロに乗ってパレ・ロワイヤル方面に向かう.コメディ・フランセーズで上演しているエウリピデスの『バッカスの巫女たち』を観るつもりだったのだが,オペラ座の『ドン・ジョバンニ』の開演前でもあった.もしかしたら余っているチケットを売っている人が劇場前にいるかもしれぬと思い,だめでもともとでオペラ座で下車.チケットが手に入らなければ,オペラ座の公演案内をもらって歩いてコメディ・フランセーズに向かうつもりだった.
オペラ座前はダフ屋がたむろしていて,チケットの「営業」をしていた.
値段を何人かのダフ屋に確認.39ユーロの席が80ユーロだと言う.ちょっと迷ったがしばらく考えることにする.何人かのダフ屋に声をかけられたが決心がつかない.開演十分前になったとき,最初に声をかけてきたダフ屋が近づいてきて「60ユーロでいい」と言う.反射的に「OK」の返事.売れ残ってしまえばみすみす損失となるのだから,ダフ屋も見極めが難しい商売だ.
オペラ座の中に入り自分の座席に行き着く扉を探していると開演が近づいたことを示すベルの音が聞こえる.オペラ座の座席構造はかなり複雑なので独力で自分の座席にたどりつくのは至難の業.開演ぎりぎりに案内役をつかまえ席を指示してもらう.天井桟敷の位置の席だが,ほぼ中央で,舞台への死角はない.オケや歌声がよく聞こえる位置でもある.この位置ははじめてではないが,久々に来ていると座席の狭さと勾配のきつさが思っていたよりすごい.歌舞伎座の三階席よりよっぽど窮屈.こんな狭い席に3時間以上座って観劇するわけだから,この席に座る人間は相当な「好きもの」だ.
ドン・ジョバンニ』は歌よし演出よしの満足度の高い舞台だった.これならダフ屋で買った値段でも後悔はまったくない.感動の余韻を反芻しつつホテルに戻る.