- 演出:Nicolas Bigards
- 作:Falk Richter
- セノグラフィ,ヴィデオ:Chantal de la Coste Messeliere
- ヴィデオ:Olivier Charason
- 音楽:Abstrackt Keal Agram
- 照明:Pierre Setbon
- 出演:Aurelia Petit, Sophie Rodrigues
- 劇場:Bobigny MC93
- 評価:☆☆☆☆
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登場人物は女性二人.この二人のモノローグのぶつかりあい,あるいはディアローグによる詩的断片で構成された舞台.一時間ほどの短い作品だった.演劇的現代詩.世俗性・卑俗性と文学的叙情性が混交する前衛的な表現ではあったが,その断片のきらめきは脆い結晶のような美しさを有している.開演前のヴェールごしにもやのように広がる青い照明,無機質な舞台へのオブジェの配置はインスタレーション美術のような効果を持っている.背景に映し出されるヴィデオ映像と美しい音楽もテクストの叙情的な美しさをひきたてる.役者がまたよく訓練されていてうまい.よくありがちなアイデンティティのゆらぎへの不安感にまつわるテクストを,断片的詩編のように舞台上で構成したイメージの連鎖による作品ではあるが,その表現はきわめて洗練されたものであり,一時間の間,緊張感はとぎれなかった.
私は残りの人生をこんなふうに過ごすことになるのかしら.感覚という感覚が不安を感知して,動揺しつづけるような.どんなかすかな物音でもはっきりと正確に聞こえてくるような.私の人生なのに,私の外側で全てが進行していくように感じられるような.
(登場人物の一人の台詞より)