閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

再会の日

午前8時半起床.今日は前回滞在時に大変お世話になった日仏夫妻の家を訪問する日.フランス人の夫のほうが昨年五月末に心臓発作で急死してしまった.知らせを聞いて手紙を送ったのだが返事が無くずっと気にかかっていた.心細い時期にいろいろと親切にして貰ったのでこのまま連絡不通になってしまうのは心残りだった.今回の渡仏前にメールを送ったところ,奥さんから返事をもらい,今回訪問することになった.パリ到着時に電話を入れたら奥さんは入院中で僕が電話した翌日に家に戻ると,留守番や家の世話のため日本からやってきた奥さんのお姉さんから聞いた.

水曜日なので,ホテルのそばにある雑誌スタンドで情報誌『ジュルバン』と日刊紙『フィガロ』を購入.『フィガロ』の水曜日版はスペクタクル一覧の別紙がついているのだ.メトロの駅のそばのカフェに入り『ジュルバン』で今後観に行くスペクタクルを検討する.

メトロに乗って三番線終点,ポン・ラヴァロワ駅へ.

約束した正午ちょうどに宅に到着.奥さんのお姉さんが作った羊肉のパン粉オーブン焼きの昼食.フランスに来てから食べたものの中で一番おいしい料理だった.奥さんのお姉さんは日本舞踊を習っていたそうで歌舞伎に詳しい.芝居の話でもりあがる.奥さんが乳ガンで入院していたことを聞く.子どもには伝えていないとのこと.初期の乳ガンだったそうだが,癌となると再発の不安をかかえてしばらく過ごさなければならない.フランス人の旦那が死んでしまうと,いくら子どもがいるとはいえ,パリでの生活に孤独感を覚えることも多いはずだ.生活の基盤はパリにあるし,二人の子どもは完全に「フランス人」として成長しているので,日本に戻る心づもりはないようだ.

食事が終わり,車で昨年五月に無くなった旦那さんの墓に連れて行ってもらう.

前のフランス滞在中に彼から受けた数々の厚意を思い出しつつ,冥福を祈る.心残りだった墓参りをすませ気分がすっきりする.ずいぶん長い時間宅におじゃました気がしたが,時計はまだ午後四時だった.ラヴァロワの駅まで車で送ってもらい,別れる.次に会うことはあるのだろうか.

いったんホテルに戻ってから,大学の研究室の後輩二人との待ち合わせ場所のソルボンヌ広場へ.特に親しく連絡をとっているわけではないが,たまには同じ研究室の人間が集まって情報交換することがあってもいいだろうと思い,声をかけたのだ.界隈の中国人経営の日本料理屋で寿司を食べた後,カフェで歓談.午後六時半から五時間.せっかく来てもらったのだからなるべく楽しい集まりにしたいとがんばって少々気疲れするが,話題がとぎれることもなく楽しい夕べだった.