閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

〈アメリカ演劇〉と戦後のフランス/日本文化

静岡県舞台芸術センター主催シンポジウム

敢えて図式的に言うと,アメリカは「大衆文化,商業主義文化」の国でありミュージカルという舞台表現はその典型,フランスは高級な「芸術文化」が大事にされ,補助金だのみの「前衛芸術」と「オペラ」が依然命脈を保っている.そして日本は戦前・戦後はインテリ主導のヨーロッパ型(フランス的)文化が主流だった,というか高級文化に対抗できるほどの大衆文化は存在しなかったのだが,高度成長期を経てアメリカ型大衆文化が中心になりつつある.東京ディズニーランドの成功はこの傾向を証明するものだ.
インテリより大衆のほうが圧倒的多数なので,「高級文化」がどんどん隅に追いやられていくのはどうしようもない.「大衆」が中途半端に知的な日本では,「高級文化」存続と発展のためにはもっと明瞭でわかりやすい保護正当化のための言説が必要となるだろう.
渡邊守章氏によるとフランスの舞台芸術シーンにおけるアメリカの受容の特徴として,アメリカを(悪い意味での)資本主義社会の象徴として表現するクリシェの存在をあげていた.80年代にパトリス・シェローバイロイト音楽祭の『ニーベルングの指輪』演出でのアメリカのイメージがその典型例だとか.二月にオペラ座で観たハネケ演出『ドン・ジョバンニ』演出でもこのクリシェが効果的に使われていたことを想起する.舞台は摩天楼のワンフロワーで,ジョバンニたちはシカゴマフィアのような出で立ちで享楽をむさぼっている.ジョバンニを滅ぼす亡霊はミッキーマウスのお面をかぶった集団によって表現されていた.