閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

臓器農場

臓器農場 (新潮文庫)
帚木蓬生(新潮文庫,1996年)
評価:☆☆☆★

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流産もしくは堕胎された奇形胎児からの臓器移植問題をテーマとするが,実質的には看護婦を主人公とするミステリ・冒険小説.
エンターテイメント小説としてはよく出来ていて,展開もスピードと変化があって面白い.
しかしその「達者」さゆえに読み進めるうちに,胎児の臓器移植という生命倫理に関わる重大なテーマを,このような大衆的娯楽小説の枠組みで扱うことに大きな違和感を感じてしまう.作者が医師でもあるだけになおさら.奇形のなかでも無脳症という極めて猟奇趣味に訴えやすい症例を選ぶところに作者の悪意を感じる.