閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

悪い女:青い門

上映時間:101 分
製作国:韓国 1998年
監督:キム・ギドク Kim Ki-duk
脚本:キム・ギドク Kim Ki-duk
撮影:ソ・ジョンミン Suh Jong-Min
音楽:イ・ムヌィ
 
出演:イ・ジウン,イ・ヘウン,アン・ジェモ

評価:☆☆☆☆

寂れた港町にある民宿で住み込みの売春を行う女の話.体を売って生きていく女の哀れさと孤独の深さをストレートに描く.主演女優の極太の眉やさえない歯科の待合室で流れているような安っぽいイージーリスニング風音楽が,映画の舞台の場末感を増幅している.
何度も躓きながらも,売春民宿の一家の中で女は擬似的な家族関係を徐々に作り上げていく.登場する「悪役」も類型的人物ではあるが,その悪党ぶりはいさぎよくて後味の悪さはない.
『悪い女』という邦題タイトルは,後の作品である『悪い男』との連想で適当につけられた感じ.娼婦ものという題材に共通点はあるものの,この映画の主人公である娼婦は,ファム・ファタル的な悪女ではまったくない.むしろ20をわずかに過ぎたばかりの若さにもかかわらず漂う老成感,あきらめの表情,そして孤独感ゆえに,周囲の人間を巻き込んでしまうような安らぎを持つ人物として描かれている.いかにもキム・ギドクらしい,あざとい道具立てのシンプルで甘ったるいファンタジー.