閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

バルトの楽園

http://www.bart-movie.jp/index.html

この手の映画を見に行くなんて何か魔が差したのだろう.ぽかっと中途半端な時間が空いた.七面倒くさい屈折したお話ではなく,直球の物語への乾きを突如覚え,この映画を選んだのだが・・・
ドイツ兵の板東収容所の「美談」については映画以前から知っていて若干の関心があった.戦争の悲惨さ馬鹿馬鹿しさ残酷さを隠蔽してしまう危険もあるがゆえ,この手の戦時美談にはいかがわしさも漂っている.にもかかわらず,どこかに「国際相互理解」について甘い幻想を持っていたい自分がいる.
「美談」であるがゆえに,ドラマの展開や表現のリアリズムにはもっと徹底したこだわりが欲しかった.人物造形がどこかメルヘンチックで実在感に乏しい.物語の焦点がぼやけていてカタルシスに乏しい作品となってしまった.池辺真一郎の音楽とその使い方が頭を抱えたくなるほどかっこわるい.
役者への演技演出があきれるほど陳腐で稚拙.高島礼子の大根ぶりには白けてしまう.顔立ちは独特の雰囲気を持っているけれども,なんでこの女優を使いたいプロデューサーが多いのか理解できない..

ドイツ人との混血役の少女,大後寿々花は可憐でとてもかわいらしいのが見所か.松平健は,うーんマツケンサンバがどうしても強烈で.
エンディングに第九が流れる.久々に耳にする第九,有名すぎるくらい有名な曲ではあり,盛り上げ方などあざといのだけれど,やっぱり名曲だなぁとしみじみ思う.映画はこの曲の力もうまく生かしていたようには僕には思えなかった.