閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

夜叉ヶ池(1913)

七月大歌舞伎

  • 作:泉鏡花
  • 監修:板東玉三郎
  • 演出:石川耕士
  • 美術:中嶋正留
  • 照明:池田智哉
  • 作曲:杵屋巳吉
  • 補曲:豊澤淳一郎
  • 出演:市川春猿,市川段治郎,市川右近,板東薪車
  • 上演時間:一時間四五分
  • 劇場:東銀座 歌舞伎座
  • 評価:☆☆☆☆
                                                                    • -

女形二役を演じる春猿の芯のある美しさに目を奪われる.伝説を尊重する人間のやりとりが中心の写実的な第一場と妖怪たちの住まう夜叉ヶ池の幻想劇の対照に,一三世紀のフランスの中世劇『葉陰の劇』が提示する世界構造を連想する.作品の背景にあるアニミズム的自然観が作品全体に柔らかな印象をもたらす優れた寓話的作品.コインの裏表のような人間界と妖怪界の対比され,この対比の総合は悲劇的な形で行われるもの,結末には解放感と爽やかさがある.抑制され,効果的に反復される音楽も趣味がいい.