七月大歌舞伎 夜の部
今回の玉三郎監修七月大歌舞伎で上演される四作品の中で,唯一現実の人間だけが登場人物である作品.乞食同然のみすぼらしい姿をした人形使(歌六)と子爵夫人縫子(笑三郎),洋画家(段治郎)の三者が劇の軸となる人物.この中で洋画家だけがまともな人物で,彼は人形使いと縫子の奇矯な言動に振り回され呆然とするばかり.坂口安吾のファルス風の作品を連想させるとらえどころない作品である.
芝居としては,長い台詞が多い上,台詞をしゃべっていない登場人物は舞台上にぼーっと突っ立っているだけの動きが乏しい.かなり集中して舞台を観ていたつもりなのだけれど,気がつくと居眠りをしていて夢想の世界に入り込んでいる.よだれまで垂らすほどだらしなく居眠りしてしまった.歌舞伎座で歌舞伎役者が演じる芝居ということで,演出上の制約は大きいのだろうけれどあまりにも無芸無策な演出であるように思えた.笑三郎熱演ににも関わらず,単調退屈な舞台だった.