閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ファウスト

演劇集団 円

上演時間から考えて原作第一部の「グレートヒェン悲劇」の部分だけの上演かと思えば,大幅な省略はあるとはいえ第一部,第二部の両方から素材を集めて作品は構成されていた.圧縮感のある雑然とした印象の作品となったが,それが舞台にエネルギーあふれる高揚感をもたらしていた.ファウスト役を演じた橋爪功をはじめとする役者の熱演ぶりもよく伝わってくる充実した舞台.演出は泥臭く,性的なモチーフの強調などで一見キッチュな舞台作りだが,テクストの読解は丁寧に行われている.果敢に意欲的な表現を取り入れているものの,その解釈は正統的であるように思った.原作の持つ「厚み」,文学性は損なわれていない.
主演の橋爪の存在感,異化作用は強烈で,初老のさえない日本人男性を代表するような風貌の橋爪功が演じるだけで『ファウスト』は和風の味付けになった.マルガレーテ役の高橋理恵子の驚異的な可愛らしさ(僕と同じ年生まれ!?)にも魅了される.