閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

オーネット・コールマン・カルテット

  • 出演:Ornette Coleman (sax, trompette, violin), al McDowell (basse), Tony Falanga (contrebasse), Denardo Coleman (drum)
  • 劇場:Cite de la musique
  • 評価:☆☆☆☆★
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オーネットの音楽を聞いたのは20年も前の話.大学浪人時代に友人と二人で行った「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」だった.初めて聞いた生のジャズ演奏でオーネットを聞いたのだ.当時の編成はドラム,ベース,ギター,キーボードがそれぞれ一対で構成された大編成.その破綻のおおらかさに大いに驚き,唖然とし,そして笑った.とても楽しい音楽だった.オーネットの音楽に度肝を抜かれたわけだが,CDを買って家で聞こうとまでは思わなかった.その後はたまたまラジオやテレビで彼の演奏が流れているのを耳にするぐらい.ただライブで聞いた一曲の主フレーズは記憶にしっかりと刻まれいた.
20年ぶりのオーネットのコンサート.オーネットはふちつきの黒い帽子をかぶり,色紙を貼り合わせたかのような派手なスーツを着ている.その道化のような衣装がぴったりと決まっている.最初は音楽のとりとめのなさにとまどった.音の洪水にひたりながら昔を思い出す.しかし15分ほど聞いているとオーネットの音楽に自然になじんでいる自分に気づく.音楽の前衛性にもかかわらず,オーネットの音楽は抒情とエネルギーに満ちている.その音楽は実は案外,聴衆の気分を和ませるような優しさに満ちているのだ.不協和音やリズムのずれも気にならなくなっていく.スピリチュアルな体験,音楽に飲み込まれる自分を意識する.やはりオーネットの音楽は偉大なのだ.身体が音楽と同調しはじめたと思ったら,もう最後の曲.ラストナンバーはすばらしかった.そしてアンコールもしっとりと聞かせた.しかしコンサートの時間は実質一時間強.いくらなんでも物足りない.
観客の熱狂的なコールにもかかわらずオーネットは一度のアンコールのあと,姿を見せることはなかった.