閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

YEBI大王

新宿梁山泊 第33回公演
http://www5a.biglobe.ne.jp/~s-ryo/yebi/yebi.html

  • 作:洪 元基
  • 演出:金守珍
  • 翻訳:馬政煕
  • 美術:大塚聡+百八竜
  • 照明:泉次雄+ライズ
  • 音楽:閔栄治
  • 衣装:近藤結宥花
  • 出演:金守珍,コビヤマ洋一,三浦伸子,黒沼弘己,沖中咲子,〈武人会〉
  • 上演時間:2時間45分(休憩10分含む)
  • 劇場:歌舞伎町 新宿FACE
  • 評価:☆☆☆☆★
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久しぶりに観た新宿梁山泊公演.金守珍演出ならではのエネルギーに満ちた濃厚な舞台をおおいに堪能する.
劇場はショー・プロレスなどの公演も行われるところ.前面に正方形のプロレス・リングが設置されたままで客席はそのリングを三方から囲むように配置されていた.その正方形のリングを利用した舞台の他に,会場奥に横長の舞台が設置されている.上演中はこの奥行きのある二つの舞台が巧みに利用されていた.
作品は二年ほど前に筧利夫主演,岡村俊一演出で上演されているがその舞台は未見.シィエクスピアの『リア王』や『マクベス』あるいはギリシア悲劇の世界を想起させるようなスケールの大きい,重厚な叙事詩劇である.金守珍演出では,エビ大王を死に誘う冥界の死神3名にコミカルな狂言回しの性格を付与し,作品のトーンに変化をつける.彼らは舞台上歌を歌い,楽器を演奏する音楽家でもある.音楽は劇全般にわたって他の梁山泊公演同様豊富に使われている.どこか童謡風の響きのあるものがしい劇中歌も美しい.舞踊や殺陣などのアクション・シーンもふんだんに取り入れられたスペクタクル豊かな舞台だった.
とにかく徹底的に非・近代的で残忍無比なエビ王の人物設定が刺激的である.7人の女児を産みながら,あくまで後継として王子の誕生を執念深く望み,そのグロテスクな欲望のために最終的には国と己自身を破滅させてしまうというストーリーは,時期的に日本の皇室の後継者の問題を連想せずにはおれない.
今回の公演ではコケットな魅力に満ちた女優陣の充実にも目を奪われる.近藤結宥花による古代風の衣装も趣味がいい.