閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

クライマーズ・ハイ 後編

http://www.nhk.or.jp/drama/html_news_high.html

【原作】横山秀夫
【脚本】大森寿美男
【音楽】大友良英
【出演】佐藤浩市 大森南朋 新井浩文 高橋一生 岸部一徳 石原さとみ 美保純 赤井英和 岸本加世子 杉浦直樹
評価:☆☆☆☆★

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台詞はかなり過剰に「ドラマ」臭くて写実味が薄いのだが,背景となる事件自体がたいていのフィクションよりも劇的であるし,その嘘っぽさが作り出す緊張感は物語の進行を推し進める役割も果たしている.「幻のスクープ」で視聴者の期待の地平をさんざん盛り上げる演出をしながら,カタルシスを与えない実に苦い結末を敢えて与える.主人公の尊厳は,敗残の惨めさの中でのか細い希望という形で,しかも彼本人ではなく,彼の周りにいた人間を通してかろうじて守られる.数々の挫折に傷つき,己の無力と運のなさを嘆き続けるような人生でも,たまさか珠玉のような瞬間を手に入れることがある.いかにささやかではかないものであっても,生きることに何らかの意味を与えくれるような瞬間が.このドラマはこうした小さな時間の人生における意義の大きさ,貴重さを伝えているように僕は思った.
もともと達者な役者をそろえているが.脚本と演出は役者それぞれの個性をよく生かしている.子役までうまいんだもんなぁ.