- 作:井上ひさし
- 演出:井上幸子
- 美術:若林由美子
- 音楽:マリオネット
- 照明:阿部千賀子
- 上演時間:一時間十分
- 劇場:新宿 プーク人形劇場
- 評価:☆☆☆☆★
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人形劇団プークの「大人のための人形劇」公演.『うかうか三十,ちょろちょろ四十」は井上ひさしの処女戯曲.1958年,発表当時の井上の年齢は弱冠二四歳である.発表後に改訂が加えられているのかも知れないが戯曲の完成度は処女作とは思えないほど高い.
「運命」に繰られるが如き人の世の切なさ,そしてその切なさ故の美しさを,昔話風の牧歌的調子の中で描く優れた寓話だった.第二幕での病床の夫の屈折ぶりとその屈折を暖かく力強くうけとめる妻の姿には,うー,我が家の写し絵を見るようで胸が締め付けられる思い.
その牧歌の暖かさの中に,24歳の人間が持ち得るとは思えないような人生に対する深い虚無が含まれているように思え,そのほのかな無常観が作品に深みを与えている.
最後のシーンの切なさにはぐっと感情がこみ上げる.
ポルトガルギターやマンドリンなどの撥弦楽器のデュオ,マリオネットの音楽が作品の抒情味を増幅させる.舞台背後に設置された大きな桜の木のオブジェの美しさも印象に残る.じゃがいもを連想させる人形の造形も可愛らしく,作風によく調和していた.