LES PARAPLUIES DE CHERBOURG
( 1963年 フランス 91分)■監督・脚本 ジャック・ドゥミ
■音楽 ミシェル・ルグラン
■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ニーノ・カステルヌオーヴォ/マルク・ミシェル
- 劇場:早稲田 早稲田松竹
- 評価:☆☆☆☆★
フランスの音楽映画の古典的傑作.未見の作品だったが,有名な主題歌はこれまで何度も耳にしたことがある.洗練されたオープニングシーンは印象的だったが,あまりにも陳腐なメロドラマ的展開と甘すぎる音楽に最初はげんなりしてしまう.「ミュージカル映画はやっぱり英米もんだよなぁ.なんでフランスものはこうダサイんだろ」と思いながら見ていたのだが,破局に至る恋の展開の平凡さへの徹底ぶりとありふれた日常的恋愛感覚の描写の細やかさに次第に引き込まれてしまう.若き頃のカトリーヌ・ドヌーブ(といっても一七歳って設定にはちょっと「えっ!」といった感じだったが)の恋愛感情の表現のみずみずしさと可憐な美しさも実に魅力的.若き日のカトリーヌは中谷美紀を漂白したような感じ.恋愛のはかなさの描写の徹底したリアリズムと日常性へのこだわりが,かえって最後のシーンの叙情的な美しさを引き立てている.
全編,すべての台詞が歌われている映画ではあるが,アメリカ的ミュージカルとは明らかに肌合いの異なる独自の様式感がある.映像音楽叙情詩といった趣の作品だった.