閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

元禄忠臣蔵 第三部

http://www.ntj.jac.go.jp/performance/703.html
《吉良屋敷裏門》《泉岳寺》《仙石屋敷》《大石最後の一日》

真山青果『元禄忠臣蔵』全編上演の第三部で,討入り直後から大石切腹の日まで.企画にそって全編を鑑賞したものの,結局真山戯曲の魅力も「忠臣蔵」という江戸以来現在まで多くの作家たちのインスピレーションを刺激し,インテリから大衆まで多くの観客から支持されている素材の魅力についてもよくわからないままだった.「忠臣蔵」は難しい.自然主義写実主義を標榜する真山戯曲でも,吉良上野介は46人の志士になぶり殺しにされて当然の極悪人というのは議論の余地のない前提なのか.芝居の中では悪役である吉良の悪辣ぶりがほとんど描かれていないので,大石や赤穂浪士たちにも感情移入しにくい.悲劇の主人公である赤穂浪士たちにシンパシーを全く感じないのだから,この芝居を楽しめないのは当然だ.史実では上野介の養子である義周は赤穂浪士に襲われたときの仕方が「不埒」であるとの理由で吉良家は断絶したとのことだがいくらなんでもあんまりな気がしてしまう.
僕にはこの主題を味わうだけのセンスが根本的に欠けているのだ.とにかく陰気で退屈,観劇中,眠気を追っ払うのにえらく苦労した.