閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ソウル市民1919

  • 作・演出:平田オリザ
  • 美術:杉山至+鴉屋
  • 照明:岩城保
  • 衣裳:有賀千鶴
  • 出演:篠塚祥司,辻美奈子,島田曜蔵,木崎有紀子,大塚寛史,ひらたよーこ,たむらみずほ
  • 上演時間:1時間45分
  • 劇場:吉祥寺 吉祥寺シアター
  • 評価:☆☆☆☆★
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辻美奈子の怒りの演技のリアリティにとりわけ引き込まれる.辻美奈子は怒っているときが顔立ちが美しく見える.
植民地支配層である日本人ブルジョワ家庭の無邪気な差別意識を喜劇的枠組みで提示する黒いシチュエーションコメディ.
時代こそ違えど,舞台上の場所は常にソウルの日本人文具商一家の居間でセットは同じ,登場人物も各部で重なるのだが,同じ役者が同じ人物を各部で演じないので,二作連続でみるとちょっと混乱して印象がごちゃまぜになってしまった.三作とも別々の日に観ればよかったなぁ.
深い余韻をもたらす幕切れの美しさがど一部,二部とも印象的だった.ブルジョワ一家内のプライベートな関係性を細かく浮かびあがらせながら,植民地支配の危うさ,脆さ,家族を包む時代の波などもしっかりと表現する,ダイアローグの精緻な設計に圧倒される.
幕切れの余韻の深さは平田舞台の魅力の一つだが,この作品の幕切れもとても美しく印象に残るものだった.この一族のその後を思い浮かべずにはいられないような絶妙の名残りが舞台に残る.

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