閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

カルテット

KIRA'S CABARET vol.1
http://www.ne.jp/asahi/info/a-o/boad/quartet/index.html

  • 作:ハイナー・ミュラー
  • 訳:渡辺守章
  • 演出:青山吉良
  • 照明:りん英子
  • 出演:青山吉良,菅原顕一
  • 劇場:赤羽橋 麻布die pratze
  • 上演時間:1時間半
  • 評価:☆☆☆★
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連続公演企画ハイナー・ミュラー・リンクの一つ.http://www.geocities.jp/hmlinkjp
演出,出演はゲイという属性を前面に出した役者,青山吉良.青山吉良の風貌は『ロッキー・ホラー・ショー』のティム・カリーのような雰囲気である.かなりの大柄,そして肉付きもよい.筋肉質というよりはたぷんたぷんした感じ.悪趣味系ファッションのゲイ.白いカーリーヘアーのカツラをかぶり,赤いたっぷりした感じのドレスを身につけた姿には迫力がある.
『カルテット』はラクロの『危険な関係』をミュラーが翻案したもの.訳は渡邊守章氏のものを使用していたが,守章氏の訳は深い学識に支えられた正確なもので目で読む分にはかまわないのだろうけど,舞台言語としては俳優および観客の負荷が大きすぎる.耳で追って理解することが非常に困難な日本語である.守章氏に言わせるとこれは日本人俳優の訓練が足りないからなのかもしれないが.
『カルテット』は一年半ほど前にtptの公演で観ている.大浦みずきが客演していた舞台である.一時間ほどの芝居だったのだが,理解の手がかりをつかむことができず,僕には理解不能な退屈な芝居だった.ほとんど半睡状態での鑑賞だった.
今回の舞台は最初の30分は半睡,真ん中の30分は覚醒,最後の30分は集中力が切れてぼんやりしていた.青山吉良は台詞発話の調子や強弱に様々な変化を与えていたが,守章訳の日本語を舞台言語として成立させるためにはもっとほかに仕掛けが必要だと思った.長台詞がこの芝居に多いだけに,どうしても単調に陥りがちである.青山吉良の発話演出にはいろいろな知的な工夫はあったのだけど,まだ不十分といった感じ.相手役の菅原顕一は台詞につまることが幾度もあり,芝居のリズムはその度に停滞した.
劇の進行自体はtptより整理されていてはるかにわかりやすかった.二人の役者が役柄を交差的に入れ替えたりしながら4人を演じるという仕掛けもうまく機能し,劇の構造をうまく浮かび上がらせていた.
麻布die pratzeは初めて行った小屋だが,外の道路の音が聞こえすぎ.今日の舞台演出では外界の音は耳障りでしかない.