三条会
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世評高く,再演を重ねている三条会の「ヒカリゴケ」を下北沢ザ・スズナリで見る.三条会はいろんなところで言及されているのを目にしていて気になっていた団体だったのだが,舞台を見るのはこれが初めて.
武田泰淳の原作は短編で,前半が紀行文,後半が二幕の戯曲形式で小型の二段組みの文学全集で35ページほどの長さ.芝居に行く前に時間が中途半端にぽっかり空いたのでその間に読み通してしまった.
この原作をどう料理するのか期待が高まる.
開幕前の舞台上には小中学校で使われる椅子と机が七組,シンメトリックな形に配置してあった.
原作が紀行文という全体のバランスを考えるとかなり長いプロローグを置いていたが,三条会版では新たな次元を作品に導入することである種の劇中劇的スタイルをつくりだし,舞台はその外側の枠組みの提示からはじまった.この外側の枠組みで用いられるギミックは意表をついていてアングラ演劇風である.ただし「内側」の芝居は,原作の一部を反復したり,順序を変えたりなどの操作は加えているが,全般に原作にある素材をそのまま生かしたものだった.外側の枠組みと内側の食肉の物語は,別個に設定されながらときに互いに浸食し合う.外側の枠組みの設定によって,内側の物語には原作とは異なったコンテクストが与えられているが,だからといって原作のエッセンスがないがしろにされているわけではない.
精密なテクスト解釈に基づく知的に洗煉された舞台だとおもったのだけど,演出意図を理解できないところもいくつかあった.不可解な謎かけがちゅうぶらりんになったままで,もどかしさも感じる舞台だった.
「せつなーい」という言葉を,物売りの呼び声のように節を付け,民謡のルフランのように繰り返す場面の叙情性が心に残る.