野田地図 第12回公演
- 作・演出:野田秀樹
- 照明:小川幾雄
- 美術:堀尾幸男
- 衣装:ひびのこづえ
- 出演:宮沢りえ、藤原竜也、渡辺えり子、橋本じゅん、宇梶剛士、三宅弘城、松村武、中村まこと、野田秀樹
- 上演時間:約2時間
- 劇場:渋谷 Bunkamuraシアターコクーン
- 評価:☆☆☆★
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宮沢りえの熱演ぶりは圧巻である。公演が二月目に入り、のどをつぶしてしまったのか若干ハスキーな声になっていたが、せりふはよく通っていて聞きづらさは感じなかった。おでこのしわが気になったけれど,彫像的な美貌は相変わらず輝きを放っている.でも宮沢えりは舞台より映画のほうが映えるように僕は思った。渡辺えり子の存在感も流石といった感じ。藤原竜也はそつなくこなすが役者としてそれほどの人材だろうか? ハンサムでかっこいいけど.
三宅弘城,渡辺えり子,橋本じゅん等々,個性的な役者をそろえた割には,あんまりこれらの役者の強烈な味が生かされていないように思う.
暴力と戦争という作品のテーマの扱いがあまりにも直球でひねりがないことに不満を感じる.主題的には坂手洋二の「燐光群」あたりと共通するものもあるのだが,観客動員数では野田地図の数十分の一であろう燐光群の屈折した表現がもたらす深みとインパクトにはとうてい及ばない.同音異義のことばのつながりから,異なる時空を強引に結びつける展開はいかにも野田っぽいのだけれども,語られるメッセージと暗喩的表現があまりにも素朴でわかりやす過ぎるように思えた.
語られる内容は陳腐、硬直したイデオロギーでもよいのだ。ただその表現はもっと凝った仕掛けで観客を惑わせてほしい。ある意味、商業主義的な演劇の作り方で、観客から引き出した期待の地平を安易に閉じすぎているように思う。チケット代とのバランスを考えると舞台の出来には不満が残る。
女性客9割。二階席二列目右端だったが死角が多く、見えない芝居がかなりあった。
娯楽作品としてはそれなり.でもコストパフォーマンスを考えると不満.近年は野田作品は,野田地図の公演よりも,歌舞伎の約束事の世界をもてあそびつつ娯楽性を追求した「研辰」や「鼠小僧」のほうが僕には圧倒的に面白い.
[追記]
この「ロープ」が読売文学賞受賞。うーん、僕の見落としていた素晴らしい要素があるのかなぁ。