閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

それでもボクはやっていない

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上映時間 143分
製作国 日本
初公開年月 2007/01/20
監督: 周防正行
製作: 亀山千広
脚本: 周防正行
撮影: 栢野直樹
美術: 部谷京子
編集: 菊池純一
音楽: 周防義和
照明: 長田達也  
出演: 加瀬亮 瀬戸朝香 山本耕史 もたいまさこ 田中哲司 鈴木蘭々 山本浩司 正名僕蔵 役所広司

「シコふんじゃった」、「Shall we ダンス?」という娯楽作の傑作を立て続けに発表した後、11年ぶりに周防政行監督が発表した作品は硬派の社会派ドラマだ。数ある裁判劇の中でも傑作の部類だと思うが、裁判で争われる事件が「痴漢冤罪事件」という当事者以外にはまず関心を持たれないような事件というひねりが周防監督らしい。犯罪としてはいかにも卑小なイメージがあり、同情よりもむしろ失笑を買いそうな罪状、刑を認めてしまえば罰金刑で終わりの軽罪。しかし「冤罪」でこの渦中に巻き込まれた者にとっては、それがどんな軽罪であっても、国家権力との闘いは全人格、人生をかけた深刻なものになってしまう。日本の裁判制度の怖さのリアルな描写に震かんする。この映画の主人公のように戦いに挑むには、どれほどの消耗とストレスを覚悟せねばならないか。緻密に構築された脚本が、警察、検察、裁判所という組織に属する人間の心理、被告となった人間の不安感を見事に説明している。
作品は被告の視線から撮られているが、演出は常に抑制されていて、情緒に流れることはない硬質な映画である。