http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2007/02/post_7.html
- 作:竹田出雲、三好松洛、並木千柳(1748年)
- 劇場:東銀座 歌舞伎座
- 上演時間:四時間四五分(休憩45分を含む)
- 評価:☆☆☆★
大序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目 足利館門前進物の場
同 松の間刃傷の場
高師直 富十郎
桃井若狭之助 吉右衛門
足利直義 信二郎
鷺坂伴内 錦 吾
顔世御前 魁 春
塩冶判官 菊五郎
四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
同 表門城明渡しの場
塩冶判官 菊五郎
石堂右馬之丞 梅 玉
顔世御前 魁 春
大星力弥 梅 枝
大鷲文吾 秀 調
小汐田又之丞 高麗蔵
竹森喜多八 松 江
木村岡右衛門 男女蔵
倉橋伝助 猿 弥
佐藤与茂七 宗之助
勝田新左衛門 桂 三
小野寺十内 門之助
斧九太夫 芦 燕
原郷右衛門 東 蔵
薬師寺次郎左衛門 左團次
大星由良之助 幸四郎
浄瑠璃 道行旅路の花聟 清元連中
早野勘平 梅 玉
鷺坂伴内 翫 雀
腰元お軽 時 蔵
通しで「仮名手本忠臣蔵」を観るのは今回が初めてである。夜の部は来週観に行く予定。
人形による口上、柝の音にあわせたゆるりゆるりとした幕引き、浄瑠璃による登場人物紹介にあわせ順々に不動の人形が生身の役者に変わっていく様子、それにあわせて聞こえてくる「東西東西」の声、大序の極めて演劇的な儀式性に引き込まれる。舞台の非日常世界の壮大さを予感させるこの儀式の数々に胸が高鳴る。派手な衣裳を着た役者たちが横長の舞台にシンメトリックに並ぶ様子も圧倒的な美しさに満ちている。今日の舞台ではこの「大序」が圧倒的に僕には面白かった。「大序」は本筋とはあまり関わりはない。しかしその後の段で演じられる「事件」が前もってなぞるかたちで提示されている。
真山青果の『元禄忠臣蔵』では吉良(『仮名手本』では師直)の悪は前提的了解事項だったが、『仮名手本』ではその悪辣ぶりが「大序」と「三段目進物場」でしっかりと描かれる。しかもこの悪は後の事件の悲劇性とは対照的に笑劇的スタイルで提示されるのだ。このアイロニーはいかにも歌舞伎的であるように思える。「大序」と三段目の「進物場」と「刃傷場」は愉しんで観ることができた。しかし刃傷の場面に続いて上演される「切腹場」の陰鬱さと長さには沈没してしまう。この退屈で冗長な場での疲労(寝ている観客も多かった)は、その後の勘平・お軽の「道行き」で中和されるのだけれども。