角田光代(文春文庫、2005年)
評価:☆☆☆☆
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
先日見たDVD版が面白かったので、原作にも手を伸ばす。映画版では主人公を妻に設定し、彼女の屈折が家族の欺の核となっていた。彼女とその母親の葛藤がドラマの中心となっていたのだが、原作は六章構成で各章で語り手が異なる。家族関係の崩壊のさまは原作ではより硬質に乾いた調子で描写され、映画版のような救いは設定されていない。
映画版は原作で提示された要素を再構成し、母子関係のゆがみの部分を強調し、ねっとりとしたドラマに仕上げている。大楠道代を主人公の祖母役に選んだプロデューサーは恐るべき慧眼の持ち主だ。監督の演出は大楠の個性をうまく生かすことで、原作とは異なる味わいを作品に導入することに成功している。大楠道代の演じる母親像は原作版の人物像より遙かにアクが強い強烈なキャラクターだ。