閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

さくらん

http://www.sakuran-themovie.com/

上映時間 111分
製作国 日本
初公開年月 2007/02/24

監督: 蜷川実花
原作: 安野モヨコ 『さくらん』(講談社刊)
脚本: タナダユキ
撮影: 石坂拓郎
視覚効果: 橋本満明
美術: 岩城南海子
編集: 森下博
音楽: 椎名林檎
照明: 熊谷秀夫
装飾: 相田敏春
出演: 土屋アンナ きよ葉・日暮
椎名桔平 倉之助
成宮寛貴 惣次郎
木村佳乃 高尾
菅野美穂 粧ひ
小池彩夢 幼ききよ葉
石橋蓮司 楼主
夏木マリ 女将
市川左團次 ご隠居 (特別出演)

マイミクの一人が絶賛していたのに,好奇心をかきたてられる.
赤を基調とした鮮やかな映像美の感覚は鮮烈である.派手で暑苦しい色遣いは,色欲金に集約される吉原の濃厚な風俗の表象である.金魚鉢の中の金魚のように不自由さと引換えに,遊女たちは夢うつつの恋のやりとりの中で,他の環境で生きている人間にはぜったいに手に入れることのでいない,ドラマに満ちた圧縮された生を享受し,時に激しく翻弄される.不自由さの中でこそ得られる逆説的な自由な精神の迸りを,土屋アンナに仮託して描き出した爽快な作品だった.幻想的な吉原の定型的イメージを最大限利用しつつ,それを肯定的な生の物語として転換し,説得力ある表現を与えることに成功した監督のセンスがすばらしい.