大笹吉雄(新水社,2006年)
評価:☆☆☆☆★
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新国立劇場での演劇公演のパンフレット上の連載をまとめたもの.1997年の新国立劇場第一回演劇公演『紙屋町さくらホテル』(井上ひさし作)から2006年五月の『やわらかい服を着て』(永井愛作)まで七七回分の連載をまとめたもの.その時々の演目そのものについての解説ではなく,その公演に関わる主題の作品について演劇史的たどっていくもの.公演そのものの内容に触れることなく,上演作品の演劇史的な位置づけがなされることで,作品鑑賞への関心をかきたてる優れた記述が数多く所収されている.たとえば2001年の『コペンハーゲン』の公演の際には,「戯曲に見る科学者の肖像」というタイトルの元,科学者の姿を描く戯曲の代表作を紹介する,カフカの『城』公演(松本修演出,2005年一月)の際にはカフカ文学を舞台化した作品を紹介するといった感じである.
長大な『日本現代演劇史』の著者ならではの,演劇史に関する豊かな蘊蓄の深さが生かされた好エッセイ.
各篇三−四ページ.最後に別項と別項として一三ページの岸田國士論.岸田國士の再評価の意義については著者の意見に全面に賛同するが,この最後の項の文章だけはそれまでのエッセイにくらべ,各段に読みにくい悪文.引用されている岸田の文章自体がかなりわかりにくいところもあるのだけど.論旨も不明確.