閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ドア・イン・ザ・フロア

ドア・イン・ザ・フロア [DVD]

上映時間 112分
製作国 アメリカ
初公開年月 2005/10/22
監督: トッド・ウィリアムズ
原作: ジョン・アーヴィング 『未亡人の一年』(新潮社刊)
脚本: トッド・ウィリアムズ
撮影: テリー・ステイシー
美術: テレーズ・デプレス
衣装: エリック・ダマン
編集: アフォンソ・ゴンサルヴェス
音楽: マーセロ・ザーヴォス
出演: ジェフ・ブリッジスキム・ベイシンガー,ジョン・フォスター
評価: ☆☆☆☆

アーヴィングの『未亡人の一年』の前半部分の映画化.
唖然とするしかないようなグロテスクな悲劇に突然襲われ,その事件以降,時間が止まっていたような凍り付いた夫婦関係が,ある夏に外から呼び寄せた若い男性が入ってくることにより,新たな一歩を踏み出すことになる.その一歩は楽観的な一歩ではなく,家族の解体のあとになされた悲壮な一歩である.しかし悲劇の衝撃による長い放心状態がもたらした退廃から抜け出すために必要な一歩だった.
この崩壊の瞬間となる一夏を,外からやってきた若者の視点から映し出す.原作のメッセージは忠実に映像化されていたように思う.静謐で荘厳な最後の場面は特に印象的である.

この崩壊は,悲しみからの回復への第一歩でもあることが,映像化されていない原作の後半では描かれている.しかしこの回復は一人の人間の生涯という長い時間を経てゆっくりと行われる.そしてアルバイトにあの夏やってきた青年も,生涯をかけてこの悲劇と愚直に関わりを持ち続けることになるのだが.

ドア・イン・ザ・フロア」は作品の登場人物が創作した寓話のタイトル.この寓話の内容が家族の悲劇を表象したものになっている.