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単行本初版,中央公論社,昭和37年.
母親に裏切られ,捨てられながらも,世間の荒波に抗し健気に力強く生きる女性の成長の過程を描く教養小説.彼女が芸者として過ごした明治末期から大正にかけての花柳界の詳細な描写のリアリティに引き込まれる.しかしなんといっても強烈なのは,母性本能を一切欠き,娘の人生を踏み台にしてエゴイズムを貫徹する母親の人物造型である.その徹底した無邪気な悪辣さには戦慄を超え,唖然として思わず爆笑してしまうほどである.実はいいところもあるのではないかという読者の期待の地平を痛快なほど裏切り続ける,この母親の悪は,その一貫性ゆえに彼女を魅惑的な人間にしている.