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文庫版で539ページ.江戸の歌舞伎小屋,中村座で起こった連続殺人事件を巡る長編推理小説.名探偵が鮮やかに謎解きをするわけではない.謎解きではなく事件の背景にある当時の歌舞伎役者とその周辺の演劇人の生理,歌舞伎小屋の風俗の緻密な描写に引き込まれる小説である.
江戸時代,とくに歌舞伎役者周辺では当たり前のように行われていた男色への言及が興味深い.異性との性交・恋愛の代替としてごく普通に同性愛があるといった感じで,小説の端々で出てくる.
ネットで「歌舞伎 男色」で検索してみるとゾロゾロ出てきた.いやぁ,全くこちらの無知が恥ずかしい.歌舞伎の若い役者の副業としての陰間売春がこんなに盛んなものであったとは.現代では女性を商品とする性産業は目につくが,男色性産業は女性のそれに比べると圧倒的に日陰の立場という感じなだけに,江戸時代に男色売春がこんなに大ぴっらに行われていたことが意外だったのだ.近代以前の日本ではむしろ男同士の性愛の作法の洗煉は,男女の性愛より進んでいたような感さえある.
個人的には同性に性的欲望を抱くなんてことは想像しがたいと思っていたし,同性愛は性的「倒錯」であるという意識がどこかにあるのだけれど,実は単なる文化的抑圧なのかもしれないなぁ.