夜の部
一、源平布引滝 実盛物語(さねもりものがたり)
斎藤実盛 仁左衛門
葵御前 魁 春
瀬尾十郎 彌十郎
太郎吉 千之助
郎党 宗之助
郎党 猿 弥
九郎助 亀 蔵
小よし 家 橘
小万 秀太郎
- 評価:☆☆☆☆
二、二代目中村錦之助襲名披露 口上(こうじょう)
信二郎改め錦之助
雀右衛門
幹部俳優出演
三、双蝶々曲輪日記 角力場(すもうば)
放駒長吉/山崎屋与五郎 信二郎改め錦之助
藤屋吾妻 福 助
平岡郷左衛門 彌十郎
仲居おたけ 歌 江
角力弟子閂 隼 人
三原有右衛門 獅 童
茶屋亭主金平 東 蔵
濡髪長五郎 富十郎
- 評価:☆☆☆
四、新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)
魚屋宗五郎 勘三郎
女房おはま 時 蔵
小奴三吉 勘太郎
召使おなぎ 七之助
父太兵衛 錦 吾
磯部主計之助 信二郎改め錦之助
浦戸十左衛門 我 當
- 評価:☆☆☆☆
「実盛物語」は初見。時代物の丸本歌舞伎で役者の様式的動きを楽しむ芝居だが、そのお話の展開の無茶苦茶さに引きつけられる。いきなり切り取られた肘から先の手を魚釣りで持って帰る無邪気な悪趣味、孫に手柄を立てさせるために孫にわざと切られて死んでしまう倒錯的な死の美学、ごろんと転がるおじいちゃんの生首、母親の死体が転がっているすぐそばで赤ん坊の誕生を祝う強烈なコントラスト。悲劇とハッピーエンドがごちゃごちゃと一つの舞台の上で平然と共存している様はかなり異様に思える。
こんなヘンな芝居だけれども仁左衛門はきっちりと様式の美しさを見せてくれる。仁左衛門のファンになってしまったなぁ。また健気に台詞をしゃべり、見得を切る千之助の可愛らしいこと!
口上は雀右衛門が今回は比較的元気そう。プロンプターなしでしっかりとした口上を述べていた。時蔵はほんと弟思いって感じだなぁ。
「角力場」は二役を演じる二代目錦之助の演技がいかにもぎくしゃくした感じで、コミカルな味に乏しい。いまひとつ。
「魚屋宗五郎」は流石、勘三郎といった感じの愛嬌のある酔っぱらい芸に見入ってしまう。親子三人の芝居は、互いの呼吸がぴったりと合った感じの安定したアンサンブルで、そのリズムの心地よさは室内楽の演奏のようだった。