閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

人間ハート失格

ポツドール+三鷹市芸術文化センター
http://www.potudo-ru.com/index2.html

【出演】 
米村亮太朗 古澤裕介 岩瀬亮 白神美央 深谷由梨香 (柿喰う客)

【スタッフ】 
照明/伊藤孝(ART CORE design) 音響/中村嘉宏 舞台監督/清沢伸也 舞台美術/田中敏恵 
映像・宣伝美術/冨田中理(selfimege produkuts) 小道具/大橋路代(パワープラトン) 衣装/金子千尋
演出助手/富田恭史(jorro) 尾倉ケント(アイサツ) 写真撮影/曳野若菜 広報/石井裕太 協力/(有)マッシュ Y.e.P
制作/木下京子 森川健太(三鷹市芸術文化センター) プロデューサー/三浦大輔 森元隆樹(三鷹市芸術文化センター)
主催・製作/(財)三鷹市芸術文化振興団体 製作/ポツドール

  • 劇場:三鷹 三鷹市芸術文化センター 星のホール
  • 上演時間:1時間50分
  • 評価:☆☆☆☆★

雨模様の天候のせいか,劇場の場所の不便さ(駅から徒歩15分)のせいか,250席ほどの客席の両端にはかなり空席があった.
太宰治の『人間失格』をモチーフに,現代日本社会の「人間失格」者の倦怠感に満ちた一日を描きだす.
今日の芝居では東中野の古ぼけたアパートに住む25歳の無職青年に焦点を当てる.
演技やせりふのディテールのこだわりようとそのクオリティの高さにはいつもながら感心する.主人公の青年の無気力ぶりに,大学院入学後,どろどろとした人間関係のなかで急速に活力を失い,無為の留年を重ねた上,修士論文を書き上げることのないまま,ひっそりと姿を消したかつての友人の姿を想起する.いや,僕自身の生活だって似たようなものだったし,部分的にはこの芝居で描かれているよりもひどいもんだった.
二つの結末が用意されているが,そのいずれも本当の「人間失格」者の現実よりは,はるかに甘く,救いのあるもののように思えた.むしろあの二つの結末は,西武新宿沿線の新井薬師や沼袋あたりのアパートに大量に棲息していそうな,人間モドキたちの願望を,具現化したものにおもえる.孤独をなぐさめようにも電話する相手さえおらず,よどんだ不安感や焦燥を爆発させる機会もないまま,ずるずると沈んでいく,僕の生活はかつてそのようなものであったし,今ももちろんこうした人間は大量に存在するはずだ.