国立劇場第七一回歌舞伎鑑賞教室
許嫁久松との結婚に心躍らせる乙女、お光、久松の奉公先の大店のお嬢、お染、そして優男の久松の三角関係の物語。
結婚生活の期待に胸膨らませるお光の純情は、お染と久松の恋の絆の強さに打ち破られる。三角関係の中で互いが互いにぎこちなく意識し合うが、お光が尼となり身を引くことで、収まりがつく。しかしお染と久松の心中という悲壮な恋の結末も、幕切れで三者が別々の方角へ別れていく様子に暗示されている。
毒婦の雰囲気が濃厚な福助が純で田舎臭い生娘を演じるのは逆説的ではあるけれど、前半部のお染に対する露骨な嫉妬の喜劇的表現には愛嬌があったし、結末の父にすがっての慟哭の場面にも心打たれた。みどころとされる義太夫にのせてのお染の「クドキ」の場面など、中盤は展開にリタルダンドがかかったような感じで、睡魔とのたたかいとなってしまった。
今日の団体鑑賞の高校生はとても行儀が良く、派手なスペクタクルのないしぶい芝居にもかかわらず、眠りこけている学生もすくなかった。