閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

パリ、ところどころ(1965)

http://www.zaziefilms.com/paris/

PARIS VU PAR...

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パリについて複数の監督の短編からなるオムニバス作品の二本立て。40年以上前に制作され、ヌーヴェルバーグの雰囲気が濃厚な『パリ、ところどころ』と昨年フランスで、この春に日本で公開された『パリ、ジュテーム』の日本。前者は六話からなり、一本の長さは一五分ほど。後者は一作品五分で一五の作品が並ぶ。シニカルな精神と硬質でシャープな表現が際だち、六〇年代の前衛的な空気を感じ取ることができる前者に対し、後者はスタイリッシュではあるがパリについてのステレオタイプを利用した叙情的な美しさを持つ小品が多い。
65年に作られた『パリ、ところどころ』では監督、出演者とも皆白人系のフランス人であるのに対し、昨年公開された『パリ、ジュテーム』では監督、キャストとも人種・国籍が入り乱れているのにも時代を感じさせる。しかし内容的には後者の方が保守的で通俗的である。
各編に出来不出来、そして好みのもの、そうでないものがあるが、各監督が自分の発見した「パリ」を表現しようと工夫をこらすこうしたオムニバス作品はパリの多様な魅力を新たに気づかせてくれる。『パリ、ところどころ』の6編の中で僕がダントツで気に入ったのは第二話、ジャン・ルーシュによる『北駅』である。
パリ、ジュテーム』の18編の作品のなかでは、最後の作品、14区のホテルに滞在し、つたないフランス語で頼りなげにパリを歩き回るアメリカ人中年女性のモノローグを映像化したアレクサンダー・ペインの作品が一番印象深い。