閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

悲情城市

  • 製作年 : 1989年
  • 製作国 : 台湾
  • 上映時間:159分
  • キャスト(役名):李天祿 リー・ティエンルー (林阿祿)、陳松勇 チェン・ソンユン (林文雄)、Jack Kao 高捷 ジャック・カオ (林文良)、Tony Leung 梁朝偉 トニー・レオン (林文清)、陳淑芳 チェン・シュウファン (美黛)
  • 監督:Hou Hsiao Hsien 侯孝賢 ホウ・シャオシェン
  • 脚本:Wu Nien Jen 呉念眞 ウー・ニェンチェン、Chu Tien-wen 朱天文 ジュー・ティエンウェン
  • 撮影:陳懐恩 チェン・ホァイエン
  • 音楽:立川直樹 タチカワナオキ、Chang Hung yi 張弘毅
  • 美術:劉志華 リュウ・チーホァ、林崇文
  • 劇場:高田馬場 早稲田松竹
  • 評価:☆☆☆★
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侯孝賢の代表作とされる作品。かつてレンタル・ビデオで借りて観たものの、はじまってから30分ほどで挫折した記憶あり。世評の高さとタイトル『悲情城市』がもたらすイメージから、一度はちゃんと見てみたかった作品である。

第二次世界大戦終戦により日本に独立した日から、蒋介石が大陸から台湾に渡り、台北に国民政府を移す台湾史における激動の四年間を、台湾の地方都市に住むブルジョワの四人兄弟を中心に描いた作品。視点の中心は四人兄弟の聾唖の末弟とその恋人に置かれている。激動の時代を、その時代の英雄として格闘した人物でなく、歴史の流れのダイナミズムの中で、もがき苦しんだあげく無力にも押し流れてしまった周縁的マジョリティを代表するような一族を通して描く叙事詩的作品だった。
そのゆったりとしたリズムと説明的場面の乏しさは、ギリシャのアンゲロプロスの作品を連想させる。
登場人物、特に中心となる四人の兄弟の関係が、とてもわかりにくい不親切な作りだった。作品が始まってからかなり長い時間がたってようやく人物関係が何となくわかってくる。この人物関係の曖昧な描写さと戦前、前後の短い間隔で時間軸を前後させたりするため、前半はかなりフラストレーションがたまる。展開のリズムもかなりたるい。自宅でのビデオ鑑賞で僕がかつて挫折したのもやむなしという感じ。

我慢して後半に至るとようやくそのリズムに慣れ、イメージ喚起力の強い映像に入り込むことができるようになった。