- 作:井上ひさし
- 演出:栗山民也
- 美術:石井強司
- 照明:服部基
- 衣裳:前田文子
- 振付:井出茂太
- 舞台監督:三上司
- ピアノ演奏:後藤浩明
- 出演:大竹しのぶ、松たか子、段田安則、生瀬勝久、井上芳雄、木場勝己
- 上演時間:2時間55分(休憩15分)
- 劇場:三軒茶屋 世田谷パブリックシアター
- 評価:☆☆☆☆
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チェーホフの評伝劇。チェーホフを生涯にわたって支えた妹を松たか子が演じ、チェーホフと後半生をともにした女優の妻オリガを大竹しのぶが演じる。チェーホフは少年期から晩年期(といっても彼は44歳の若さで死んでいるのだが)を4人の役者が各世代ごとに担当する。この世代ごとに演者が変わるというやり方がうまく機能していた。役者はそれぞれ己の持ち味を生かして作り上げたチェーホフ像の違いを楽しむことができた。
この劇での井上ひさしの解釈によれば、チェーホフは少年時代に夢中になったボードビルへの志向を生涯にわたって持ち続けていた。私は未読・未見だが、数編のボードビル劇を実際に書いているらしい。そして二人の女性に支えられることで創作を続けてきた、必ずしもドラマに富むとはいえないチェーホフの生涯は、ここではやはりボードビル的な様式に基づき表現される。
ピアノの生演奏と、大竹しのぶと松たか子の達者な歌と踊りに彩られた音楽劇で、喜劇的場面がふんだんに取り入れられているものの、そこにはやはり底抜けの明るさと能天気さはなく、どこか憂鬱げな影が感じられる。
芸術座のスタニスラフスキーとの作品解釈を巡る葛藤など、芸術論に関わる部分の深度が浅いように思った。「ロマンス」というタイトルからは二人の女性とチェーホフの関係が伝記の軸になりそうなのだが、後半は芸術論的な部分とプライベートな物語がうまくかみあわずちぐはぐとした感じがした。
これだけのスタッフをそろえればこれぐらいのクオリティの舞台はできるよなぁ、と思いつつ、物足りない感が残る。