閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

新曲『浦島』

http://www.geidai.ac.jp/facilities/sogakudou/info/2007-0725-0938-14.html
東京芸術大学演奏芸術センター,東京芸術大学音楽学部・美術学部主催
東京芸術大学創立120周年企画

  • 原作:坪内逍遙
  • 台本:瀧井敬子,野村四郎,笠井賢一
  • 演出:野村四郎
  • 美術:宮廻正明
  • 照明:高木どうみょう
  • 作曲:東音大塚睦子ほか
  • 出演:坂東三津五郎,花柳源九郎,花柳寿美ほか
  • 上演時間:2時間25分(休憩20分)
  • 劇場:上野 東京芸術大学奏楽堂
  • 評価:☆☆☆
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ワグナーの楽劇理論に触発された坪内逍遙が,明治三七年(1904年)に演劇論書『新楽劇論』と前後して発表した実験的創作歌劇.浦島伝説に取材した恋物語
その全編が上演されるのは今回初めてだとのこと.序幕の前曲の部分だけは長唄の名曲として,しばしば演奏の機会があるらしい.
三津五郎が主役の浦島を演じてると今の今まで思っていたのだが,彼が演じていたのは幕間に出た,今回の上演にあたってのオリジナルの役柄,坪内逍遙先生であった.序幕とニ幕の間をつなぐ幕間劇といった感じで逍遙は登場し,『新楽劇論』の中身の要約を観客に解説する.その理論は,日本の伝統芸能と西洋のオペラの融合によって世界に誇る新たな舞踊劇を創出しようとした逍遙の意気込みの強さを感じさせる非常に興味深い内容だった.
しかし基本的に能,狂言,歌舞伎,長唄といった日本の伝統芸能をベースに作られる序幕はともかく,洋風のダンスを取り入れ竜宮城の様子を描くニ幕,洋楽,オーケストラを入れ,オペラ風のアリアを導入した三幕,と幕が進むにつれどんどん表現が陳腐で安っぽいものになっていった.芸大にあるリソースを最大限利用した,120周年祭のための内輪の学芸会のようなのりになってきて,場が進行するにつれしらけてしまう.
ただしニ幕で小魚を演じた子どもたちによる舞踊集団,パワフルエンジェルの運動能力の高さには驚嘆! あれはすごい.小学校中学年ぐらいの女の子の集団が,見事なバック転や宙返りで舞台をはね回るのだから.