閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

結城座古典劇場

江戸糸あやつり人形 結城座
http://www.youkiza.jp/index.html

  • 演目:三番叟、証誠寺の狸ばやし、杜子春、寿獅子、伊達娘恋緋鹿子火の見櫓の場
  • 上演時間:1時間30分(休憩15分)
  • 劇場:三鷹 武蔵野芸能劇場
  • 評価:☆☆☆☆
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数年前にフランス人の演出家との共同製作で、ジュネ作『屏風』を見て以来、古典芸能から前衛作品まで扱う結城座の糸あやつり人形に関心をもっていたのだが、今回はじめてその本公演を見ることができた。

演目は「三番叟」「証誠寺の狸ばやし」「杜子春」「寿獅子」「伊達娘恋緋鹿子」の五本立て。公演時間がもしかすると歌舞伎なみの長さかなと想像していたのだけれども、各演目は「杜子春」の30分が最長で、残りは10分前後の短いものばかりだった。

あっけないほどの短い演目ばかりで、筋立ても単純でわかりやすいものばかりだった。どれも面白かったのだが、とりわけ感心したのは「三番叟」と「寿獅子」だった。行く前から舞踊を人形でやるとうことに大いに好奇心を刺激されていたのだが。
「三番叟」は古くから伝わる演目で、演出、人形とも古式に則ったもの。7分の短い作品だったが、数十本の糸に操られる人形の独特な動き方と人形造型のリアリズムがもたらすふしぎな違和感に目を奪われる。ただし僕がとりわけ興味深かったのは、最初と最後に人形がおこなったゆったりとした丁寧な「礼」の様子だったのだけれど。
「寿獅子」は獅子舞を人形劇でやるという趣向。獅子舞の踊り手の足のコミカルな動きがとても可愛らしい感じがした。
「伊達娘」は義太夫と三味線ひきの人形まで出して、しっかりと演奏させるところが可笑しいのだけれど、お七の動き自体は歌舞伎の「人形ぶり」でのほうがはるかに面白い。
「証誠寺の狸ばやし」は童謡そのままの雰囲気の、唖然とするほど他愛のない話。上演時間は15分。墓場でたぬきがおしょうさんを馬鹿そうとするが、やっつけられてしまう話。おばけと骸骨の幽霊にたぬきは化ける。幼児向けの絵本のような単純さ。音楽も童謡風である。
杜子春」は空飛ぶ仙人と巨大な閻魔大王というスペクタクルが目玉。音楽はフリーっぽいジャズなど現代の洋楽を使っていた。杜子春の人形がハンサムで格好いい。

古典劇場と銘打っていたので、いかにも伝統芸能といったいかめしい演目が中心なのかなと思っていたのだが、軽いスナックのような後味の娯楽性の強い作品が並んでいた。
小学校一年生の娘を迷った末連れていった。会場に入ると、老人の客が中心で、小さい子どもの観客は他には一人もいなかったので「連れてくるべきじゃなかったかな」と少し後悔したのだけれど、実際は舞踊ものを含め、こどもが見ても楽しめる作品ばかりだった。
ただし10分、5分という短い作品ばかりだし、作品としてもシンプルすぎるため、物足りなさは残る。
11月にザ・スズナリ渡辺えり子作・演出による結城座の公演があるらしい。渡辺えり子だったらうまくこの糸人形一座の特性を生かした幻想的なお話ができそうである。今日の公演を見て、11月公演も観に行きたくなった。