閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

アルゴス坂の白い家 ─クリュタイメストラ─

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000032.html

  • 作:川村毅
  • 演出:鵜山仁
  • 美術:島次郎
  • 照明:服部基
  • 音楽:久米大作
  • 音響:上田好生
  • 衣装:原まさみ
  • 舞台監督:北条孝
  • 出演:佐久間良子、小島聖、李丹、山田里奈、篠崎はるく、磯部勉、有薗芳記、石田圭祐、山田崇
  • 上演時間:2時間50分(休憩20分)
  • 劇場:初台 新国立劇場中劇場
  • 評価:☆☆★
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鵜山仁が芸術監督に就任した新国立劇場の今シーズン最初の企画は、「三つの悲劇ギリシャから」と題されるもの。三人の現代作家にギリシャ古典悲劇を土台にした翻案新作を書き下ろして貰い、それを作者とは別の人物が演出するという試みである。
川村毅作、鵜山仁演出による一作目はアイスキュロスのテクストを土台にしたものである。シーズン最初の演目というだけでなく、鵜山の芸術監督就任後、初の企画ということにも期待が膨らむ。
原作の世界とその原作の世界をなぞるかのように進行する近未来の映画監督と女優の一家の物語が、劇中劇としてダイナミックなかたちで交錯する構造を持つ意欲的な作品であり、川村戯曲らしいユーモラスでキッチュな演劇的仕掛けや、中劇場の舞台機構を活用した独創的なスペクタクルもあったのだが、全般には散漫で冗長な作品だった。作品を通して伝えたいことはいったい何だったのだろう? 最後はアイスキュロスの原作とは異なり、夫殺しの母親クリュタイメストラは、母殺しをもくろむ娘エレクトラとの和解で終わる。
役者も演出家も、場面場面を作ってので精一杯で、どのようなヴィジョンでもって全体を作ってことまで頭が回らない感じだった。作者である川村自身が演出していれば、もっと強引にまとめていったようにも思うのだが。川村=鵜山という組み合わせも今回の上演ではうまくかみ合っていないように僕には思えた。